高血圧について、厚労省のレポートよりまとめ
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特に関連の深いエネルギー・栄養素 )
・栄養素摂取と高血圧との関連について、 肥満を介する経路と介さない経路がある。
・ナトリウム(食塩) 、炭水化物 、アルコール 、 肥満などが高血圧の正の関係がある。
・カリウムは、高血圧を抑える。
・ナトリウム(食塩)の過剰摂取が血圧上昇と関連があることは、多くの研究によって指摘されて きた。・・・食塩に影響を受けるタイプの高血圧がある
参考:食塩感受性高血圧…ホメオスタシス(恒常性)によって、体には血液のナトリウム濃度を一定に保つ機能が備わっている。ところが食塩感受性タイプの人では腎臓でのナトリウム排出機能に障害されやすく、塩分を多くとると、腎臓の交感神経の活動が促進され、塩分の排泄をになう遺伝子の働きが抑制され、血液中のナトリウムの濃度が上昇する。ナトリウムは水分と結びつきやすいので血液量が増加し、結果として血圧が上昇することになる。
・日本腎臓学会の「エビデンスに基づく CKD 診療ガイド ライン 2018」14)では、食塩摂取量目標値を上限の6 g/日未満だけでなく下限を 3 g/日以上とし ているが、上限値に比べて下限値のエビデンスは乏しい。
・食塩摂取量が高いほど脳卒中及び全循環器 疾患のリスクが上昇することが示された。
・肥満者は非肥 満者に比べて高血圧に進展するリスクが約2倍であった。エネルギー制限によって減量すれば血圧 が低下するが、エネルギー制限をしても体重が減らなければ血圧は低下しない。
肥満 自体が高血圧の重要な発症要因と考えられる。
・体重減量が高血圧を改善することについては、介入試験による報告も多く、エビデンスは 確立している。
・習慣的飲酒量が多くなればなるほど、血圧値及び高血圧の頻度が高 く、経年的な血圧上昇も大きいことが示されている 。また、飲酒習慣のある男性高血圧患者 において飲酒量を約 80% 減じると、1〜2週間のうちに降圧を認めた 。
我が国の「高血圧治療ガイドラ イン 2019」では、高血圧者の飲酒は、エタノールで男性 20〜30 mL/日以下、女性 10〜20 mL/日以下にすべきであるとされている。エタノールで 20〜30 mL は、おおよそ日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合弱、ウイスキーダブル1杯,ワイン2杯弱 に相当する。
・一方、少量から中等量の飲酒により冠動脈疾患リスクが低下することが、内外において報告され ている 。しかしながら、飲酒量が増加するほど脳卒中、特に脳出血のリスクが上昇すること も報告されており 、脳卒中の多い日本人では高血圧予防の意味でも飲酒をしない者には少量 の飲酒を勧めるべきではない。
・カリウム ・・・野菜、果物、低脂肪乳製品が豊富な食事パターンである DASH 食 は、その血圧低下効果が 証明されているが、カリウムはその主要な栄養素の一つである。
介入試験のメタ・アナリシスでは、 カリウム摂取量増加は高血圧者では有意な血圧低下効果を認めた 。コホート研究のメタ・アナ リシス では、カリウム摂取量が高いほど脳卒中のリスクが低下したが、冠動脈疾患のリスクには有意の関連はなかった。
・近年、ナトリウム/カリウム摂取比あるいは尿ナトリウム/カリウ ム排泄比が循環器疾患リスクと関連することが報告されている 。すなわち、カリウムは、食塩過剰摂取の血圧上昇などの作用に拮抗していると考えられている。
・2012 年の WHO のガイド ライン では、血圧低下及び脳卒中リスク低下のためにカリウム摂取量 90 mmol(3,510 mg) ─435─ /日以上を推奨しており、また、WHO ガイドラインの推奨摂取量を達成した場合、ナトリウム/ カリウム摂取比はほぼ1対1(単位は mmol/mmol)になり、健康への好影響をもたらすとして いる。
・腎障害を有する者では高カリウム血症を来し得るので、カリウムの積極的摂取は避け るべきである。
・以上の点から「高血圧治療ガイドライン 2019」では、野菜・果物の積極的摂取 を推奨している(カリウム制限が必要な腎障害患者を除く)。
・カルシウム …カルシウムも、DASH食の主要な栄養素の一つである。これまで多くの疫学研究で、カル シウム摂取量の増加に伴い血圧が低下することが示されている が、その程度は大きくなく、我が国を含む各国の高血圧ガイドラインでは血圧低下のため のカルシウム投与は推奨されていない。
・マグネシウム …マグネシウムも DASH食 の主要な栄養素の一つである。2012 年の介入試験のメタ・アナ リシス ではマグネシウム補充による軽度の血圧低下を認めているが、別のメタ・アナリシスで は有意な血圧低下は認めなかった 。
・ n─3 系脂肪酸 …DASH食では魚を増加させており、魚油由来の長鎖 n─ 3系脂肪酸〔エイコサペンタエン 酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)など〕は要素の一つとな っている。
・これに関連して「高血圧治療ガイドライン 2019」では、多価不飽和脂肪酸の積極的 摂取が推奨されている。INTERMAP からの報告 などの観察研究で、n─3系脂肪酸の摂取量が 多い者は血圧が低いことが示されている。また、EPA、DHA、DPA の総和の血中レベルが高い 者は血圧が低いという報告もある 。
介入試験のメタ・アナリシスでは、中央値 3.7 g/日の魚油 の投与で有意な血圧低下が認められた 。特に、45 歳以上、血圧が 140/90 mmHg 以上の者で、 その効果は顕著であった。有意な血圧低下を得るには、3 g/日以上の n─3系脂肪酸の摂取が必要 と考えられる 。
・INTERMAP では、植物油由来のα─ リノレン酸を含む n─ 3系脂肪酸摂取量は 日本人では約3 g/日、EPA と DHA の合計が約1 g/日であり、欧米に比べるとかなり摂取量が多 い 。 n─ 3系脂肪酸摂取による循環器疾患リスク低下を示す観察研究の報告は国際的に多く、血圧低下以外のメカニズムも推測されている。魚油由来 n─3脂肪酸摂取が世界でも特に多い日本人にお いても、コホート研究において心筋梗塞、脳卒中、心不全などのリスク低下が報告されてい る 。
・その他の脂質 血圧低下効果を有する食事パターンである DASH食 では、総脂肪、飽和脂肪酸、食事性コレステロールを減少させている。我が国を含む国際共同研究 INTERMAP では、食事性コレステ ロール摂取量と血圧の正の関連、n─ 6系脂肪酸(リノール酸)摂取量と血圧の負の関連が報告さ れている。
・炭水化物が豊富な食事に比べて不飽和脂肪酸が豊富な食事において血圧低 下を認めている〔炭水化物が豊富な食事は炭水化物 58%、脂肪 27%(一価不飽和脂肪酸 13%、 多価不飽和脂肪酸8%)、不飽和脂肪酸が豊富な食事は炭水化物 48%、脂肪酸 37%(一価不飽和 脂肪酸 21%、多価不飽和脂肪酸 10%)〕。
・不飽和脂肪酸(一価及び多価)が降圧作用を有する可能 性がある。以上を受けて、「高血圧治療ガイドライン 2019」では、飽和脂肪酸、食事性コレステロールの摂取を控え、多価不飽和脂肪酸を積極的に摂取することを推奨している。
・食物繊維 …DASH食 では、野菜と果物を増加させており、食物繊維は要素の一つとなっている。「高 血圧治療ガイドライン 2019」では、野菜・果物の積極的摂取を推奨している。
・たんぱく質 …植物性たんぱく質摂取量と血圧の負の関連、また、植物性たんぱく質に多 いアミノ酸であるグルタミン酸の摂取量と血圧の負の関連が報告されている。OmniHeart 研究 72)では、食事の炭水化物の一部をたんぱく質で置き換えると、軽度であるが有意な血圧低下 を認めた(炭水化物が豊富な食事は炭水化物 58%、たんぱく質 15%、たんぱく質が豊富な食事は 炭水化物 48%、たんぱく質 25%)。この研究では、特に植物性たんぱく質の増加の程度が大きか った。
・乳製品や低脂肪乳 製品は、疫学研究のメタ・アナリシスで高血圧リスクを抑えることが示された 。
・ 炭水化物 …食事の炭水化物の一部をたんぱく質や不飽和脂肪酸で置き換えると血圧が下がるという 研究 の結果は、見方を変えると炭水化物が血圧を上げる可能性を示す。
・栄養素の複合的な摂取 …単独では血圧低下効果が弱い栄養素でも、組み合わせて摂取することによって大きな血圧低下効果を示すと考えられる。
・野菜、果物、低脂肪乳製品が豊富な食事パターンである DASH 食事パ ターンは飽和脂肪酸と食事性コレステロールが少なく、カリウム、カルシウム、マグネシウ ム、食物繊維が多いが、大きな血圧低下効果のエビデンスがあり、多くの高血圧治療ガイドライン で取り上げられている。
しん研良院 奈良県香芝市のカイロプラクティック
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