精神疾患系や発達障害のみかた
うつ、統合失調症、発達障害、ADHDなど
考え方)
脳内の化学物質のアンバランスによって機能低下が起こっていることが、精神的な不調の原因になっていると考えられています。
たとえば、セロトニンという神経伝達物質が低活性だと「うつ」が引き起こされることになります。
ノルエピネフリンの量が増えすぎると、「不安症」。
ドーパミンの上昇があれば、「統合失調症」。
この神経伝達物質は、モノアミン類を呼ばれるのですが、このような考え方を「モノアミン仮説」といいます。
___________________
例:うつ
セロトニンの不足が原因である場合、セロトニンの材料と補因子を分子栄養学の観点から補います。
神経細胞間の情報を伝える脳の神経伝達物質のひとつセロトニンは、ナイアシン(ビタミンB3)や鉄、葉酸、ビタミンB6などの栄養素が必要です。
セロトニン不足の疑いがあれば、主原料のタンパク質はもちろんそのようなビタミン・ミネラルを食事やサプリメントから十分摂ることが、改善への一歩となります。
ちなみに、病院の薬はセロトニン再取り込み阻害薬などが出されるようです。
このように、分子栄養学的な観点からのアプローチのひとつは、神経伝達物質の正常化です。
そのために次のようなことを行います。
○それぞれの神経伝達物質の量の把握
・セロトニン
・アドレナリン
・ノルアドレナリン
・GABA
・グルタミン酸
○メチレーションの状態の把握
○参加ストレスの状態を把握
○体内の炎症の把握
○腸の状態を把握
・セロトニン産生
・アドレナリン代謝
・腸脳相関
○副腎の状態を把握
・低血糖
・炎症を抑える働き
ただし、セロトニン量がむしろ高いレベルの人もいます。
この場合、薬剤その他でセロトニン量を増やしてしまうと、自殺念慮の出るおそれがあります。
体内のセロトニンの多くは、腸内で作られていますが、血中のセロトニンと脳内のセロトニンとの相関関係については、まだよく分かっていないようです。
実際には、脳内のセロトニン量を決定する因子として、メチレーションの状態をみます。
たとえば、低メチレーションであれば、セロトニンの再取り込み輸送タンパク質が多く作られ、脳内のセロトニンは減ります。
このメチレーションの状態というのは、ある程度までは遺伝子レベルで決まっているようです。
アメリカのウォルシュ博士は、この分野の研究の第一人者で、彼によると
・うつの患者の38%が低メチレーション
・20%が高メチレーション
だということです。
彼によると、血中ヒスタミン濃度とSAMe/SAH比率がその判別の参考になるようです。
低メチル化状態では、SAMe/SAH比率が低くなり、血中ヒスタミンが上昇する。
高メチル化状態では、この逆になる。
○臨床では次のような項目でどちらのタイプかあたりをつけます。
「低メチレーション」
・花粉症
・アルコールや薬物への依存
・何度も確認する。完璧主義タイプ。
・競争心が強い
・性欲が強い
・妄想や強迫的な傾向
「高メチレーション」
・不安やパニックがある
・アレルギーがある
・自分より他人を優先してしまう
・ドライアイや口渇がある
・芸術的なセンスがある
・睡眠障害がある
・体を良く動かす。おしゃべり。
___________________
「ウォルシュ博士の「うつ病の生化学タイプの分類」
メチレーションの低下・・・38%→低セロトニンなので、SSRIが効くタイプ
葉酸の欠乏・・・20%→セロトニンやドーパミンが高く、SSRIが効かない
銅の過剰・・・17%→ドーパミン低下でノルエピネフリンが高い
ピロールの異常・・・15%→高度なセロトニン・GABAの低下がある
毒物による影響・・・5%
その他・・・5%
このような生化学レベルでのタイプ分けによって、それぞれに必要な分子栄養学的アプローチを行うことで、神経伝達物質の合成やシナプスの活動性が正常化し、身体や脳の状態がよくなっていきます。
「このアプローチのポイント」
神経伝達物質の合成に必要な栄養素の量を正常化させること
・セロトニンはトリプトファンから合成されるとき、補酵素としてビタミンB6を必要とするので、不足のある人にはこれを補う。
・ドーパミンは2種類のアミノ酸からの生成過程で鉄や葉酸を必要とするため、不足のケースではこれを補う。
・同じようにノルエピネフリンでは、ドーパミンからの生成の時に銅が必要。
・GABAでは、亜鉛やビタミンB6.
これらの栄養素の量は、個人個人の栄養の代謝量や代謝酵素の遺伝子発現などで大きく異なるため、個別に調べていかなければならない。
『発達障害について』
『原始反射の残存』
『中枢神経系の統合不全』
○子どもの問題・・・子どもが最近扱いにくくなった。過敏な反応。反応に乏しい。各種の体の不調。
○大人の問題・・・残存する原始反射~高所恐怖症、人と接するのが苦手、体の不調がとれない
○発達障害・・・生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹と、その人が過ごす環境や周囲の人との関わり合いのミスマッチで社会生活に困難が発生する障害のこと。
○「発達障害者支援法」による定義~世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の基準に準拠
・・・『発達障害』とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
・・・てんかんなどの中枢神経系の疾患、脳外傷や脳血管障害の後遺症が、上記の障害を伴うものである場合においても、法の対象とする
○文部科学省(2012年)の調査・・・通常学級に在籍する児童・生徒の中で発達障害の特徴を示す子どもは全体の約6.5%で、約15人に1人の割合となる。
______________
○広汎性発達障害(PDD)・・・コミュニケーションと社会性の困難さを特徴とする障害
広汎性発達障害は、自閉症・アスペルガー症候群・レット障害・小児期崩壊性障害・特定不能の広汎性発達障害を含んだ総称です。
ただし、これまで広汎性発達障害というカテゴリーのもと、アスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症などさまざまな名称で記述されていたものは、2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」の診断名のもとに統合。
○注意欠陥・多動性障害(AD/HD)・・・年齢的に相応した言動などに不注意・多動・衝動性の症状が複数見られる障害
○学習障害(LD)・・・知的発達には問題はないが「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」などの特定の能力を要する学習が極端に困難な障害
○知的障害 ・・・知的な発達の遅れがある障害
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○グレーゾーン・・・定型発達と発達障害の間の境界領域を指す俗称。医学的な診断基準を全て満たすわけではないものの発達障害のいくつかの特性を持ち、日常生活を送る上でも困難を抱えている状態であるとき、グレーゾーンと言われることがある。グレーゾーンには、その人の持つ症状や特性の程度やその現れ方が、体調や環境・場面によって左右されるという特徴がある。例えば、学校にいるときは症状が強く出るが、家では比較的症状が弱くなるといったことが起こる。
発達障害の現れ方
1)脳(中枢神経)の機能障害がある→改善の可能性がある
2)乳幼児期に症状が顕在化する
3)症状は進行性ではなく、介入の仕方や発達により変化する
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①発達に凹凸がある(ゆがみ)・・・広汎性発達障害(PDD)、自閉症
・特定できない広汎性発達障害
・自閉症
・アスペルガー症候群(障害)
・小児崩壊性障害
②行動や認知の量・質にかんして、同年齢の子どもの程度を超えている(偏り)・・・注意欠如・多動症(AD・HD)、学習障害(LD)
・注意欠如…集中力にむら、忘れ物
・多動…椅子でモジモジ、手足のソワソワ、じっとできない
・衝動性…順番を待てない、他人の邪魔をする
※食生活の乱れのある子どもが多いようです。
③同年代の子どものできる知的活動ができない。達成年齢が遅い。(遅れ)・・・知的障害(MR)
参考図書)
・アプライド キネシオロジー シノプシス (科学新聞社)
・ブレインジムと私 ポール・デニッソン著
・ブレインジム-発達が気になる人の12の体操 (健康双書) 神田誠一郎
・人間脳を育てる 動きの発達&原始反射の成長 灰谷孝著
・親こそ最良の医師 (gentle revolution) グレン ドーマン著
・いのちの輝き―フルフォード博士が語る自然治癒力 フルフォード,ロバート・C.、 ストーン,ジーン著
【カイロプラクティックによるアプローチと可能性】
○まず脳半球の優位性について
・左右脳の優位性は、遺伝的に決定されている。
・発達過程においては、生後3~8年で優位性が決まり、全身で統合される必要がある。
・優位脳の判断は「利き目」「利き耳」「利き手」「利き足」で予測される。
参考)
利き耳テスト・・・音叉を近づけてより聞こえやすい方は?
利き足テスト・・・胡坐で上の足は?背中を押されて真っ先に前に出る方の足は?
利き目テスト・・・どこかの一点を筒越しに見る場合、どちらの目に筒をあててのぞく?
利き手テスト・・・ベストハンドテスト
優位脳の判断~利き脳テスト
※利き目、聞き耳、利き手、利き足が全て同じ側であれば理想的である。
※学習障害で多いケースとして、利き目が右で利き手左など。
○カイロで考える「神経学的統合不全」について
・神経系と身体の混乱状態のことで、からだの右側と左側の機能不全がある。
・求心性受容器が中枢神経システムの解釈と矛盾した情報を送ることが原因となる。
○神経系の混乱⇒「スイッチング」について
・このような神経系の混乱は「スイッチング」と呼ばれ、検査結果が逆転してしまい、カイロプラクティックの施術がうまく進まない原因となる。
⇒この場合、臨床ではスイッチングの修正を行ってから施術を行う必要性がある
・乳児では2~5ヶ月になるまで左右の脳半球が同期化しない。そのため両目の動きが同期していない。
※何らかの発達過程の影響によって、数十年後も同期化が安定しないケースもある
※大きなストレスを受けたりすることでスイッチング状態に陥ることもある
※発達障害の徒手的アプローチにおいても、このようなことを考慮する。
修正方法)
・KI27兪府と臍への刺激
・その他
※根本的な原因を探して、それを修正する事も必要
______________
クロスパターンについて)
遺伝的に決定されている脳半球の特性は、適切な機能のためにその優位性を全身で統合されなくてはならない。
クロスパターンの施術)
略
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子宮内~16週・・・反射活動
16週~6か月・・・橋、視覚と聴覚の一側性の活動
6か月~1年・・・中脳、クロスパターン、クロール両側の体を同時に活動させる、直立位への準備をおこなう重要時期
1年~5年・・・初期の大脳皮質の発達、継続的な両側性の発達、歩行
3年~8年・・・左右脳半球の優位性、継続的な神経学的な統合の発達
(参考1) 機能的離断症候群(FDS)について
○半側空間無視や失読症などの離断症候群ではなく、修復可能な機能的離断症候群がある。
・3つの特徴あるパターン・・・「左右半球のどちらかの領域の活動が低下している」「機能が高い側の半球領域の活動レベルが正常の活動レベルに比べて高い」「機能が弱い半球の活動減少と機能が高い側の活動増加。つまり、左右差が大きい」
・正常な脳機能は、通常左右の半球が調和して働くが、脳の左右の機能的なつながりに対する問題などがある状態。
・左右の調和的な脳機能が働いていない場合、片方の機能がオフ状態に陥り、結果として対半球が調和を整えようと強く働く。その状態が長く続くと、左右の脳が機能的に離断された状態になり、言語や非言語などにおいてさまざまな問題が引き起こされる。
・脳の不均衡の特徴・・・頭の傾き、免疫の弱さ、音やにおいの過敏、触られることが苦手、筋トーンの問題、偏食
アプローチの方向性)
弱化側の半球にカイロプラクティック的な刺激を入力する。あるいは五感を刺激したりすることで、抑制を賦活し左右の機能の調和を目指す。
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(参考2) 左右の脳の働きのトラブル(ヘミスフェリシティー)について
・左右の脳の働きの機能的なバランスがくずれている。片側の脳の機能が低下。
・固有受容器、GTOの刺激~対側皮質へ同側脳幹網様体活性、同側交感神経抑制~こういった部分で左右差が出ている状況
・左右の脳梁ではつねにコミュニケーションをとっているが、左右のバランスが悪くなることで体にさまざまな不調を引き起こす
・以前は、言語と視空間の情報処理について想定されていたが、今は大脳非対称性調節を含むより広い範囲を想定している。
・・・自律神経の非対称性調節、左右非対称の末梢感覚、楽観性と悲観性の感情バランス
・・・認知や注意、学習、感情に対しても関係
※大脳半球は、視床・扁桃体・海馬・大脳基底核・黒質・赤核・尾状核・小脳・脳幹網様体核・末梢神経系という構造の機能的非対称の可能性も含んで考える。
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ヘミスフェリシティの引き起こす体の機能異常に関して)
・筋骨格系の異常
伸筋群の機能亢進
脊柱内在筋の弱化による不良姿勢~左右の筋肉の柔軟性の偏り
骨盤底筋の弱化、頸椎や腰椎の前弯減少、胸椎の後弯増大、サブラクセーション
前後や左右での重心の動揺
左右の関節の角度差がでるので捻挫や腱鞘炎になりやすい
※バランス感覚が悪くなる為、背骨、首やあごの位置が歪みやすい
※ヘミ側の肩が持ち上がる、頭がそちら側に傾く、足の偏平。でん部の筋肉の左右差、肋骨の左右差などがおきる
⇒首、肩、背中、腰のコリや痛み、顎関節症、不良姿勢が発生する。
※ヘミ側の骨盤の下がり、股関節まわりの硬さ
※片方のつま先だけ外側を向く。巻肩で腕が内ねじれなど。
・自律神経の働きの低下
(起こりやすい症状)
めまいや立ちくらみ、耳鳴り、高血圧、無呼吸症
物がふたつに見える、頭痛、顔面神経痛、、顔や手足、内臓のしびれ、飲み込みにくい、しゃべりにくい、
動悸や不整脈など心拍数や拍動のリズムの変化、背中や胸の痛み、、おなかの不調(下腹部の痛み、下痢や便秘)
うつ、パニック、イライラ、対人恐怖、引きこもりなど
・子どもの発達障害と深い関係がある
⇒ADHDや自閉症、アスペルガーなど
※大脳皮質が未発達⇒反射的な行動や交感神経系の活動をうまく制御できない
⇒衝動的な異常行動、全身のさまざまな症状(過剰な交感神経活動~血流障害、消化不良、知覚過敏)
※自閉症のこどもは異常行動以外にその他の全身症状を併せ持っていることが多い。
たとえば、免疫系の問題(アレルギー症状、食物過敏)や
胃腸障害(消化不良、過敏性腸症候群、リーキーガット症候群など)など。
⇒腸粘膜障壁から未消化のタンパク質が通り抜けて抗原抗体反応が起こりやすい状況になる
~左脳は抗体を活性化させる役割/右脳はそれを抑える役割(免疫機能のコントロール)
⇒左脳の機能低下では感染がおこりやすく、右脳の機能低下ではアレルギーや食物過敏がおこりやすくなる
※自閉症のこどもの右脳と左脳はうまく連絡が取れていない状態になっている
※発達障害のこどもでは、同期しない左右の偏った活動パターンによって心身のアンバランスな状況を作っている。
~左脳と右脳が調和して統合された働きがうまく行われていない部分
※注意の偏向、衝動性、興奮性、多動のでる注意欠陥障害や注意欠陥多動症こどもでは、左右の大脳半球それぞれの特有性(側性化)が不十分になっている
~右脳の発達段階で障害⇒身体感覚↓、バランス機能や運動機能の発達に障害
~左脳の発達段階で障害⇒音を識別する能力や眼球運動の制御がうまくいかない、言語発達や学習能力の低下
__________
検査法)
自律神経系の検査
・血圧(上がっている側の機能低下)
・心拍数(多い方が機能低下)
・眼底鏡を用いた静脈と動脈の太さの比率(VA比率)、酸素飽和度、末梢血管の血流(貫流率)などの測定
目に関する検査
・盲点の大きさ
・寄り目にした時の寄り具合で内直筋の強さをみる
・眼瞼下垂の有無
・瞳孔反射・・・対光反射(反対側の脳をみる)や輻輳反射(同側の脳をみる)
・共同側方注視でのMMT(反対側を調べられる)
口まわりの検査
・舌の筋(舌先の向く側が↓)
・軟口蓋不全の有無
・口蓋垂の位置(下がった側↓)
臭覚の検査
聴覚の検査(反対側を調べられる)
筋力検査
~胸椎●番より上は前面に、下は後面の筋肉が緊張
~同●番より上で背面、下で前面で筋の弱化
※一側が画一的に機能低下しているというより、実際は部分部分で機能低下が混在している状況の方が多いと考えられるので、検査は様々なものを行う。総合的に見て判断する必要がある。
__________
アプローチ)
・前庭器官などを通して神経系に刺激を送る~神経ネットワークの統合性
・機能が低下している神経ネットワークや障害のある神経経路・神経細胞を活性化させる
・脳のトレーニング
・リズミカルな音とともに眼球運動
・四肢で反復運動
・その他省略
(参考3)子どもの発達過程における混乱・妨害要素
次のようなことで、子どもの正常な発達を妨げてしまう恐れがあります。
・いつも同じ側から授乳している・・・いつも授乳の際に片側の手足、目をに制限を加えることになり、両側性の神経機能の発達を妨げる。そのため、授乳の際は左右どちらからも行うようにする。
・離乳食に移行した際に、片手でスプーンの使用を強制する・・・大脳皮質と中脳の発達時期においては両側性の発達を十分に行わせたいが、それが達成される前に片方の側の優位性を強制してしまうことで、子どもの健全な発達を妨害してしまう。
・早く歩かせようとする、歩行器を使う・・・一つの段階の発達が達成されていないのに、次の段階に無理に誘導することで結果的に中枢神経の発達の遅延を起こしてしまう。
・左手利きを右利きに直してしまう・・・生まれつきの左優位性の発達があるのに、社会的な事情を親が考慮してわざわざ右優位に変化させようとするのは、神経学的統合不全を生むことになり、もっと大きな問題を生じさせる結果となる。
原始反射の統合不全
原始反射とは・・・赤ちゃんが使う生まれつき備わっている反射。この反射で外界に対応している。
原始反射の統合不全について・・・原始反射がコントロールされていない状態のこと。そのため、勝手に反応してしまう身体をコントロールすることが難しくなっている。大脳皮質の発達が不十分な子供はより顕著になる。原始反射調合不全がみられると、場にそぐわない行動や年齢に不相応な振る舞いとして現れる。
臨床で扱う原始反射)
○恐怖麻痺反射、初期子宮内反射、引き込み反射(FRP)
関連する問題)
・起立性調節障害 ・チック ・触覚防衛反応 ・自閉症スペクトラム(ASD)
特徴)
・かんしゃく、自己否定感、被害妄想、感覚過敏
・不安な状況において過度な緊張がでる。新しい環境への恐れがみられる。ストレス下で固まる。
⇒固視が困難で指をじっと見ると体に不随意の揺れや緊張が生じる。これは、固視微動(静止物体を見つめている時、わずかな目の揺れがある)の異常により、目が揺れないため補正作用として体を揺らしたり緊張させたりするからだと考えられる。
・胎児のときの統合不全により、内と外の感覚が弱いために漠然とした不安感に包まれているため、何か行動をおこすと大きなエネルギーを必要としする。このため副腎疲労も起きやすいかもしれない。
・息を吸う反射でもあるため排泄機能の低下をひきおこす。この場合、アトピー、アレルギー、気管支や免疫系の弱さが出る可能性。
(検査)
・マイヤーソン徴候 ・スイッチング
・輻湊眼球運動~指を近づけると体がむこうに押される(陽性)
・ディレクトウォーク
・驚かすと身体が固まる(陽性)
・直接ではなく、遠くからでもくすぐるとくすぐったいと感じる
(アプローチ方法)
・フックアップ
・スイッチングの解除
・変形オシレーション
○モロー反射
外的ストレスで両下肢を開いて閉じる
・関連する問題
ADHD、ADD で重要、感覚過敏、触覚
防衛反応
・特徴
外的ストレスを感じた際に強く反応し、初期の「闘争・逃走」反応を起こすため、不注意、多動性、衝動性が振る舞いとして現れる。また、副腎疲労症候群によるアレルギー体質、起立性調整障害の要因になることがある。
Moro 反射は動眼機能の発達段階として「注視」が絡むため、この機能が弱いと視界に入るもの全てに目を向けてしまう。この状態は「魚の目」と言われる外的に対する注意反応(魚は鳥の影など視界に入るだけで反射的に潜る)目の機能と発達障害にみられる振る舞いの関わりは強く「不注意⇒注目できない」「多動⇒周辺の方がよく見える」「衝動性⇒視界に映ったものを無視できない」などが考えられる。
Moro 反射は息を吐きだす反射であり、息を溜めておけないことを示す。このことから持続の苦手(運動、集中力、注意)が振る舞いとして現れる。また、息をはき続けることの方が楽なため、動き始めたら止まれない。そのため、「疲れるまでたら止まれない。そのため、「疲れるまで動き続ける⇔疲れて動けない」を繰り返す。
・検査
上半身と下半身の分離テスト
驚かす(小さいこどもには行わない)
腹筋群の検査(腹圧がかからないため、
タオルやボールを引っ張り合うとすぐに離す)
・アプローチ
スターフィッシュエクササイズ
副腎の調整
・関連する問題・・・感覚過敏、触覚防衛反応、ADHD、ADD
・残存すると慢性的な副腎刺激によって、副腎疲労がおこりアレルギーや起立性調節障害のもとになることがある。
・未来への不安(予期不安)、衝動的な振る舞い
・突然の音、光、刺激への感覚過敏反応
・衝動的な振る舞い
・偏食
・活動過多、ADHD、ぜんそく、アレルギー、副腎疲労、慢性病
・検査・・・上肢下肢の分離テスト、腹筋検査
・アプローチ・・・スターフィッシュエクササイズ、副腎に対して
※恐怖麻痺反射(受胎後5週~誕生時までに統合、吸気の反射)とモロー反射(生まれて最初の反射、呼気の反射)は二大反射として重要となる。
_______
○緊張性迷路反射(TLR)
・関連する問題・・・発達性協調運動障害、注意欠陥、低緊張、学習障害
・前庭系の反射でバランス感覚や空間認識などに関連する。姿勢反射の基礎でもある。
・動きがぎこちない、バランス感覚がよくない、ふらふらしている
・姿勢が悪い、スポーツの成果が思うようにアップしない
・距離感がつかめない、でんぐり返しがうまくできない
・前方TLR・・・弱い筋緊張、前に転びやすい、猫背、ペタペタ歩く、高所恐怖症~モロー反射と関係
・後方TLR・・・強い筋緊張、後に転びやすい、ぎくしゃくしている、つま先歩き、上り階段が怖い、空間認知の弱さ~恐怖麻痺反射と関係
・検査・アプローチ・・・省略
発達性協調性運動障害、注意欠陥、低緊張、学習障害
・特徴
前方TLR と後方TLR があり、それぞれ現れる反応が違う。
前方TLR は、弱い筋緊張が特徴的で「フニャフニャしている」
「ペタペタ歩く」「前に倒れ込む」「猫背」「腕が挙がらない」「高所恐怖症」などがある。
後方TLR は、強い筋緊張が特徴で「ギクシャクしている」「つま先歩き」「協調運動の問題」「昇りの階段が怖い」「空間認知が弱い」などがある。
TLR は、姿勢反射、運動スキルの基礎であるため、運動の苦手としても現れる。
・検査
閉眼足踏み
・アプローチ
・スターフィッシュエクササイズ
・スーパーマン
○吸綴・探索反射
・関連する問題・・・発声、呼吸、食事、聴覚、ホルモンバランス
・残存があると口や唇まわりに過敏が起こる。舌が前方にとどまり発声の問題や吃音、嚥下や咀嚼の問題。
・統合されるとホルモンバランスの改善により、甲状腺や副腎の問題がよくなることがある。
・これらの反射が残っている場合、狭い歯列弓や上顎前突などを引き起こし歯列矯正を必要とすることがある。
・口呼吸になることが多くなりアデノイド、甲状腺に影響が出ることがある。
・食感の好みが出て、好き嫌いが多くなりやすい。
・音を立てて食事をしてしまう、麺類をすすれない。
・検査・・・舌の検査、口周りの検査
・アプローチ・・・舌骨のリリース、あいうべ体操、オクルーザルパワーゾーン、甲状腺調整、その他
・関連する問題・・・呼吸、コミュニケーション(発声)、食事、聴覚、ホルモンバランス、緘黙
・特徴
唇と口の周りに過敏が起こる。また、下が前方にとどまるため、「発声の問題」「どもり」嚥下や咀嚼の困難」などにつながる可能性がる。また、食事でクチャクチャ音をたてたり、麺をすすれなかったりするのも、この反射の残存が考えられる。ホルモンバランスの異常もみられ、この反射が統合されると甲状腺機能異常や副腎機能異常に改善がみられるケースもある。
舌の運動に関与する舌下神経前位核は動眼神経、滑車神経、外転神経に接続する。
そのため、下の運動と眼球運動は相関関係がみられ、この反射の統合は眼球運動の基礎発達と強く関連する(とくに水平眼球運動)
ジョン・E・アプレジャーの「頭蓋仙骨治療Ⅱ 硬膜を超えて」には、顎の機能と聴覚の間に関連を示す内容が記されている。
このことから、口周辺の反射である探索・吸啜反射の統合不全がみられる子供は話を聞けない傾向がみられる(耳が柔らかいこどもの特徴)
・検査
反射検査(鼻の下、鼻の横から口の向けて柔らかいもので擦る)、舌の視診
・アプローチ
口の周りを擦る
舌骨リリース
オクル―ザルパワーゾーン
舌筋リリース
あいうべ体操
甲状腺の調整
○脊髄ガラント反射、ペレーズ反射
・関連する問題・・・夜尿症、側弯症、聴覚過敏、注意力や集中力の問題
・じっと座っていられない
・おねしょが直らない
・体の動きのスムーズさの問題
・検査・・・ガラント反射検査、ペレーズ反射検査
・アプローチ・・・スノーエンジェル、腎臓や膀胱の調整
※大人の場合は完全に消えないので、定期的なエクササイズが必要となる。
夜尿症、側彎症、聴覚過敏、注意力、集中力
・特徴
胎児のとき、羊水越しにひびく外界の音を振動として感じ耳に届ける働きがあることから、この反射が統合されていないと聴覚に影響する。
ガラント反射は、膀胱反射を喚起し排尿が促される。また、この連絡を行う恥骨反射は腎泌尿器系、骨盤底筋のトーン、生殖器との関連が考えらえることから、泌尿器系の弱さや夜尿症との関連が考え骨反射は腎泌尿器系、骨盤底筋のトーン、生殖器との関連が考えらえることから、泌尿器系の弱さや夜尿症との関連が考えられる。
滑車神経異常の兆候がみられることが多い。このことから滑車神経の代償性頭位がみられることがあり、横に読む場合はスムーズに字を追うことが難しい。
・検査
ガラント反射検査(腰椎レベルの脊柱外側付近を縦に擦る)
ペレーズ反射検査(L3,4レベル、T3レベル付近を横または同時に擦る)
・アプローチ
スノーエンジェル
腎臓の調整
膀胱の調整
「6と9」「qとb」の文字を使って滑車
神経の調整
○手掌把握反射(パーマー反射)・・・手のひらに触れると、つかむように握る
・関連する問題・・・力加減が分からない、手を使うと疲れる、不器用
・ピアノを弾いたりするとき姿勢が崩れる
・鉛筆の握り方が不適切、字が下手
・検査、アプローチ・・・省略
※バブキン反射・・・探索吸綴反射と手掌把握反射をつなぐ反射
手のコントロールが苦手になるため、手先の不器用や力加減の苦手として現れる。
また、字が下手、書き順や漢字間違いなども多くみられる。また、乳児期のお座りから立つ段階に困難が現れる。
手掌把握反射で母乳がたくさん出るようにおっぱいをマッサージし、探索・吸啜反射で母乳を吸う行為を繋ぐ反射にバブキン反射(移行反射)がある。
バブキン反射の残存傾向として手根管症候群や下腿の筋緊張などがみられる。
・検査
手掌把握反射検査(手のひらの母指、示指間から豆状骨の方へ2、3回こする)
・アプローチ
手関節の調整
手指、手掌のマッサージ
手掌のアイソメトリック
上肢を8の字に回す
肺の手関節の調整
手指、手掌のマッサージ
手掌のアイソメトリック
上肢を8の字に回す
肺の調整
手遊び
○足底反射(新生児プランター反射・バビンスキー反射)
・関連する問題・・・バランス感覚の悪さ、スポーツが苦手
____
・歩行の遅れ、靴を履いていられない、靴下を脱ぎたがる
・立っている時の腰痛、慢性的な足首やすねの痛み
____
・つま先歩き
・ふくらはぎの硬さ、ハムストリングスや腰背部移行部の問題
・上目使い
____
・偏平足、母趾のところに靴の穴が開く
____
・かかと歩き、どしどし歩く、かかとに痛み、アキレス腱痛、シンスプリント
・体幹不安定、バランスの悪さ
※足指の問題~ハンマートゥーなど
・検査・・・バビンスキー反射
・アプローチ・・・足底や足指のエクササイズ、その他
バランス感覚の悪さ、スポーツの苦手、
ゆらゆらする
・特徴
足底のアーチと脊柱の生理的湾曲の相関関係から、足底反射が活性化している側でガラント反射も活性化していることが多い。
バビンスキー反射が残存し、スポーツをしていると親指に慢性的な血豆があったりする。
新生児プランタ―反射では、同じところに靴下の穴が開いたりする。
足底反射は、感覚過敏のようで足底の感覚受容器が上手く成長していないため、一年中裸足で生活する感覚の鈍さも併せ持つ。
また、足底の感覚の鈍さからバランス感覚も悪く運動に困難が生じる。
・検査
バビンスキー反射検査
・アプローチ
足関節の調整
足底のマッサージ
足趾のアイソメトリック
下足底のマッサージ
足趾のアイソメトリック
下肢を8の字に回す
大腸の調整
つま先歩き、踵歩き、内反歩き、外反歩
き(ホームサポート)
○非対称性緊張性頚反射(ATNR)
首を向いた側の上下肢が伸展し、反対側が屈曲する反応
・関連する問題・・・ADHD,学習障害、発達性協調運動障害、斜視、左右盲
・ボールを投げたりとったりが困難
・書字や筆圧の問題、板書が苦手
・真中が分からない
・スポーツが苦手になる
・大人の場合では、慢性的な首肩の問題
・検査・・・四つ這い検査
・アプローチ・・・略
ADHD、学習障害、発達性協調運動障害、
深視力の問題、斜視、左右盲
・特徴
左右の脳が強調されていないため、正中を挟んだ左右の動きを協調させることが困難であり、自分の正中もうまく認識できない。
そのことから「ボールを投げる」「水泳のクロール」などの運動の苦手や
正中がわからないことで識字の苦手が現れる。
・検査
四つん這いで肘を軽く曲げ、脊柱を真直ぐにした状態で頭部を左右に向ける
・アプローチ
カイロプラクティックアジャストメント
トカゲエクササイズ
心臓の調整
小腸の調整
○対称性緊張性頚反射(STNR)
・関連する問題・・・姿勢の問題、目の遠近調節
・検査・・・四つ這い検査
・アプローチ・・・キャットエクササイズ、その他
姿勢の問題、目の遠近調整
・特徴
ハイハイの状態で顔をあげ、遠くをみることができるようになることから、目の遠近調整をコントロールするようになる。
また、遠くを見るときは副交感神経、近くを見るときは交感神経が働く。そのため、目の遠近調整が苦手であると自律神経の切り替えも苦手とも考えられる。
目の遠近調整に苦手は距離感がわからず、ボールのキャッチが苦手、パーソナルスペースの距離感がうまくとれないということにも関連する。
・検査
四つん這いで肘を軽度屈曲させ、頭部を
屈曲伸展させる
・アプローチ
キャットエクササイズ
AK フィクセーション
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○対称性緊張性頚反射は8か月まで、それ以外は6か月までで統合される。
このように原始反射は、成長発達とともに統合されるが、完全いなくなった状態ではなく、大脳の成長にともなって抑制され消えるようになる。
ただし、緊張などで大脳の機能低下が起こると出現したりすることがある。
○3歳までに原始反射がうまく統合されていない場合は、早めに働きかけていく。
・ボーダー:3~6歳、6~10歳、10~14歳、14~20歳
・逆子(下肢内旋など)、帝王切開(生まれてくるときの刺激が弱く反射の残存が出やすい)、難産(圧痛変動が大きい)などのケースでは、より積極的なアプローチが必要になる。ケガや事故にあったケースも同様。
・14歳を超えると働きかけの難易度が上がる
・大人になっても原始反射の残っているケースはよくあるが、この場合エクササイズ等つねに行って調整しておく。
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アプローチの方向性)
どの神経発達の段階で問題が生じたのかを検査し、そこから再度神経発達を促す刺激を入力する。
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各種エクササイズを行うための参考サイト)
https://ameblo.jp/braingymlearning/entry-11338117777.html